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「休息」こそアンチエイジングの要

2010年8月23日

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のんびりするのがアンチエイジングの要。

 旅先のコタキナバルで、出産間近と思われる妊婦さんに出会った。大きなおなかで旅行者の荷物を運んでいる。思わず「大丈夫?」と声をかけると、「ありがとう、でも大丈夫。私たちの民族は、みんなお産当日まで畑仕事をするくらいだから」と笑う。しばらくして手が空くと、私のところにやってきて、「私、こんな歳なのに初めての妊娠なの。結婚して9年も赤ちゃんができなくて」と堰を切ったように話し出した。

 日本では出産年齢が上がっていて、私自身も遅い出産だったことを話すと、「でも、日本人は寿命が長いから」と、切ないことを言う。何でも、彼女はマレーシアの中でもかなりのマイノリティに属する民族で、女性の平均寿命は60歳に満たないのだそうだ。思わずため息が出る。「お肌のアンチエイジング!」なんてことを言っていられるのは、長い人生と日々の健康あればこそなのかもしれない。

 けれど、よくよく考えてみると、中医学では「健康と美しさ」の根っこは同じだし、それが「不老長寿」の発想にもつながっている。とすれば、「いつまでもキレイに」という努力こそが、将来の元気をつくることになるかもしれない……と思い直すことにする。

 そうであるならば、やはり外側からのアプローチではなく、内側からのケアということになる。夏~秋にかけてのデイリーケアについては前回にも書いたので、今回はエイジングと密接な関わりがある「腎」という臓について触れてみたい。

 中医学では、「腎」は体内の水分代謝をコントロールするという働きのほか、成長や発達、生殖、老化と深く関わっていると考えられている。あるひとつの臓器がエイジングと深く関わる……なんて話は、ともすると「非科学的!」と切って捨てられそうなのだが、中医学では「臓」といっても、内臓そのものを指すわけではない。あくまで「概念」なのである。でも、決して絵空事というわけではなく、その理論を用いてこそ、漢方薬や食養生も本領を発揮するようにできている。

 さて、その「腎」の機能が“虚ろ”になった「腎虚(じんきょ)」という状態になると、聴力や視力の低下、めまいや耳鳴り、骨がもろくなる、記憶力の低下、生殖機能の低下、早すぎる白髪など、いわゆる「老化現象」が起こるといわれている。

 中医学ではずっと、「腎」をいたわり、ケアすることこそが、アンチエイジングの秘訣と考えてきた。西太后とか則天武后など、美にとことんこだわり、長生きもした女性たちは、「腎の働きを高める」食材を追い求めることに、相当のお金と労力を費やしたといわれる。

 では、「腎の働きを高める食材をとること=アンチエイジングの決定打」になるかといえば、それは微妙なところ。というのも、20~30代で「腎虚」と思われる症状が出ている場合、生活そのものに問題があることが多いから。その原因を取り除かずに、食べ物だけで何とかできるものではない。

 忙しさは時に人を輝かせるけれど、慢性的な過労とストレス、そして、不規則な生活の積み重ねは、確実に人を老けさせる。「いつの間にか、実年齢より上に見られるようになった」なんてことに気づいたら、ちょっと注意が必要だ。いくらやりがいのある仕事を続けていたとしても、知らず知らずのうちに疲れがたまり、「腎虚」となっている可能性がある。

 あまりにも当たり前の結論で、ちょっとがっかりさせてしまうかもしれないけれど、労働と休息のバランスこそが、アンチエイジングの要。そのうえで、適度に「補腎食品」(例えば、ねばねばした食材や黒い食品など)を食生活の中に取り入れていくのがよいと思う。

 腎の考え方はかなり奥が深くて、ここですべてを紹介することはできないが、「そういう考えもあるんだ」というくらいに理解してもらえたらうれしい。

 当コラム最終回となる次回は、「健康法」との付き合い方についてまとめてみたい。

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髙島系子
髙島系子(たかしま・けいこ)
中医学ライター。約15年にわたり、国内外で中医学に関する取材を続け、体の「なぜ」を「なるほど」にする知恵を広めるべく活動中。執筆のかたわら、中医学を活かしたごはん作りのワークショップも開催している。現在、シンガポール在住。著書に「妊婦は太っちゃいけないの?」(新潮社)
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