「料理本の通りに作ったのに、なぜかおいしくない」「この間と同じように作ったつもりなのに、今日は失敗!」なんて経験、誰にでもあると思う。
忘れがちなことだが、料理というのはイキモノが相手である。野菜はもちろん、肉や魚も、季節や産地、鮮度などで味が違ってくる。冷蔵庫にある味噌だって、徐々に発酵が進んで風味が変わる。長期保存できる乾物類でさえも、もとは生き物。だから、素材の違い、あるいは加工の仕方や保存方法など、さまざまな条件においしさが左右される。そんな相手を扱うのに、「いつも同じおいしさ」を求めるほうが間違っているかもしれない。
前回も書いたけれど、自分や家族が家で食べる料理は、そこそこおいしければいいと思う。「今日はごはんが硬いね」「ちょっと醤油入れ過ぎた!」なんて会話、私は嫌いじゃない。とはいえ、あまりにも適当に作り過ぎて、食べられないようなシロモノができ上がってしまうのはやっぱり悲しい。毎日の料理を、それも、時間がない中の一発勝負!というときに、失敗せずに料理を仕上げるコツ。それは、「本を見ないで作る」「ひたすら味見すること」だと思う。
かくいう私、実は料理の本が大好きで、朝から晩まで眺めていた時期もあった。今も、「分からない料理」「初めて食べた料理」に出合ったときは、まず本を探して材料やら作り方を調べる。けれど、その本を見ながら作ることは、ほとんどない。というのも、本を見ながら作るという作業は、とても疲れるし、時間がかかるから。なにせ常夏のシンガポール、そう何時間も冷房なしの台所にいられるものではない。



