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試練もなんのその! ~母たちが現地校を選ぶワケ

2010年1月27日

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せっかく中国にいるのだから

 上海に長期滞在する日本人は約4万8,000人(08年10月1日時点)。都市別長期滞在者数では、07年に米国ニューヨークを初めて抜き、トップとなった。上海総領事館に在留届けを出していない人や長期出張者なども含めると、上海に暮らす日本人は8万人から10万人いるのではないかと言われている。

 3、4年のサイクルで入れ替わる駐在員とその家族が数としては最も多いが、中国人の配偶者を得た人、会社を興す人、期限なしで赴任している長期駐在員など、中国に根を張って生きていこうとする日本人も増えている。そういった人たちの中には子どもを日本人学校ではなく、現地の学校に通わせる人も少なくない。

 現地校に通わせる母親たちのグループ「上海現地校母の会」の平井久仁子さんに話を聞いた。

「特に幼稚園では、日系よりも授業料が安いことが現地校を選ぶ大きな理由になっています。また、せっかく中国にいるのだから中国語を学ばせたいというのも理由のひとつです」

 会がスタートしたのは、1998年。日本とは異なる学校のシステムや考え方の違いに戸惑うことは多い。情報交換ができれば――。そう思って同じような立場の母親に平井さんが声をかけたところから始まった。現在メンバーは100人を超えるという。

ロボットのような子どもたち

 現地校に子どもを通わせるようになった時、母親たちは多かれ少なかれ違和感や戸惑いを覚える。

 中国語と英語のバイリンガル養成を掲げる現地私立小学校に娘を通わせるミズキさんの場合は、教室を支配する教師の姿だった。

「授業参観での担任の先生の教え方は、それはもう素晴らしいものでした。でも、子どもたちがロボットみたいで、絶対服従という感じなんです。別の機会に学校を訪ねた時は昼食後の休み時間でした。他のクラスの子たちは遊んでいるのに、うちの子のクラスだけは教室がしーんとしていて皆、座って字を書いていました。休み時間くらい遊ばせてもいいのではないかと思いました」

 帰宅後は大量の宿題があり、娘は怯えながら机に向かっている。宿題をしていかなければ教室で一体どんな目に遭うんだろうか、ミズキさんは不安を感じるようになった。そんなある日、娘がミズキさんに言った。

「台湾人ってバカなんでしょ、先生が言ってたよ」

 絶句した。子どもに問いただすと、ある台湾人の生徒の成績がひどく悪かったらしい。それをあげつらう言い方を教師がしたのだった。

「勉強は大切ですが、遊ぶことも友達と仲良くすることも大切なこと。こんな先生のもとにいたら、子どもの性格がゆがんでしまうのではないか、そう思うようになったんです」

 日本の学校でも、教育方針やその姿勢に疑問を持ちたくなるような教師はいるだろう。しかし、担任はほとんどが1年で交代する。1年我慢すれば、尊敬できる教師が担任になる可能性もある。ところが中国では、入学すると卒業までクラス替えはなく、担任もよほどのことがない限り卒業まで変わることはない。逃げ場がなかった。

 不安を抱いた母親はミズキさんだけではなかった。1年生が終わると別の私立校へ転校した子どもは数人いた。

「今ももちろん毎日宿題はありますが、量は減りましたね。楽しそうに学校へ行くようになってほっとしています。ただひとつ、前の担任に感謝していることがあるんです。あれだけ厳しく1年間勉強させられたおかげで、娘には勉強する習慣がきちんとつきました」

金品を暗に要求

 現地の幼稚園に娘を通わせるミチコさんが転園を決意したのも、教師が原因だ。以前から高圧的な教師の態度には疑問を感じていたが、そんな教師そっくりの話し方をするようになった娘を見た時、ぞっとしたという。

 そのほかにも唖然とする場面はあった。教師の日や旧正月前の親からの付け届けを躊躇なく受け取り、付け届けのあった親子には特別扱いをする。一時帰国時には、担任から買物リストを渡されたこともあった。リストにあった化粧品を買って渡した。

「『代金は払います』と言われてはいましたが、果たして全額もらっていいのかすごく迷いました。周囲に相談すると、全額はもらわないほうがいいとアドバイスされたので結局、半額だけ受け取りました。すると数日後、娘が大きなぬいぐるみを持って帰ってきて。どうしたの?と聞くと、先生からもらったと言うんです。それも、ほかの生徒がいる前で、ですよ。びっくりしました」

成績だけが絶対的な評価基準

 しかし、中国の教師が揃いも揃って問題教師ばかりというわけではないだろう。子ども3人を現地の小学校と幼稚園に通わせるヨシミさんにも聞いてみた。

「付け届けについては教師に個人差があると思いますから一概には言えないと思いますが、公立であればあるほど教師が厳しくて、詰め込み教育一辺倒だと思います。子どもの評価基準は、勉強ができるかどうかだけ。勉強のできる子は日本で言うところの学級委員を先生から任命されます。その子は先生の目にもなって、他の生徒のことを密告するように言われているんですよね。そういう学級運営ってどうなのかなぁって思います」

 日本の教師は授業以外のプリントを作る、事務連絡をする、といった細々とした雑務に忙殺される。一方中国では教師の世界も、ビジネスの現場と同様に役割分担がはっきりしていて、「私の仕事は教えること、それ以外は私の仕事じゃない」という姿勢の教師が多い。雑務は、雑務担当係や生徒、そして生徒の親に押し付ける。

 そのかわり、自分の職分では力を発揮する。成績だけが絶対的な評価基準の世界で辣腕をふるう。成績の良くない子どもの親は、父母会に行くと肩身の狭い思いをすることになる。親自体が評価の対象となり、教師によっては家庭での指導がよくないからだと名指しで批判することも。ますます親たちは子どもの尻をたたき、いたたまれなくなった親は父母会に姿を現さないようになっていく。ちなみに、中国では共働き家庭が主流のため、父母会は昼間ではなく夜、行われる。

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Profile
須藤 みか
須藤 みか(すどう・みか)
上海在住ノンフィクションライター。出版社勤務を経て、94年に中国へ語学留学。北京の国営出版社勤務ののち、フリーランスに。上海の社会や暮らし、出版事情、在中日本人の労働事情などに関する記事を発表している。著書に『続 上海発!中国的驚愕流儀』『上海発!新・中国的流儀70』『上海ジャパニーズ 日本を飛び出した和僑24人』(講談社+α文庫)。『エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち』で小学館ノンフィクション大賞を受賞するなど、中国以外の分野の取材も続けている。
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