JICA、NGO、そして政界へ

山内さんは、北関東ブロック選出の衆議院議員だ。みんなの党の国会対策委員長であり、副幹事長でもある。国際協力事業団(JICA)で4年間勤務した後、NGOのピースウィンズ・ジャパンでジャパン・プラットフォームの立ち上げに尽力し、2005年の衆議院議員選挙で当選。今年8月末の総選挙にて2期目の当選を果たした。
政界に身を置いて4年以上たったわけだが、さて、国会での国際協力への関心の度合いはいかがですかと、まず聞いてみた。
「ODAへの関心は低いですね。内向き志向といいますか、鎖国的といってもいいかもしれません。日本にも困っている人はいるのにという反応が多い。それに、対外援助に厳しい目を向けています。どう誤解を解いていくか、考えてしまいます。日本は資源も市場も海外に依存しているのに、最近は海外留学も低調だと聞いています」
私は山内さんを、国際協力についての正確な情報を内側から国政に届けられる唯一の人物、と思っているのであるが、その山内さんをして、芳しくない感触を持っているようだ。
鳩山首相の東アジア共同体構想など聞くと、現政権も海外への関心を失ったわけではないと思うが、と水を向けると、「スローガンだけに走っていて、東アジアの国々といかに相互依存関係を強固にするか、実務的なこと、経済活動は何も語られていません」と、断じた。
「核軍縮など日本がリードできることはもっとあったというのに、オバマ大統領に先行されました。省エネなどアジアに売り込める技術があるのですが、グローバル・イシューについてもまた具体論がない。与党が提起しないので国会での審議もできません。世論もない」
と、少しばかり憮然とした表情で山内さんは語るのであった。
「援助省」構想
国際協力と外交の役割分担について、山内さんは明快な構想を持っている。それは、援助のプロが継続的に実施に関わる仕組みを作ることだ。大きな方針と政策は、JICAの頭脳部分と外務省、経産省、環境省などの関係省庁の一部と合体させて創設した機関が担う。研究機能もそこにおき、総定員を絞る。つまり援助省を創設する。そして、JICAは援助のプロとして実施に専念する。山内さんはここで、ドイツのGTZ(技術協力公社)やイギリスのDFID(国際開発省)などを例に挙げながら、国連機関から仕事を受注できるような、国際競争力がある機関を目指すべきと、語った。
また、青年海外協力隊についても「ボランティア(派遣)は政府の仕事ではないから、イギリスのようにNGOに委託するのがいいと思います。同じ金額でもっと効率的効果的な事業ができます」という。
しかし、日本は既存の仕組みを変えるとなると10年かかる国である。創設した後も微調整をしているうちに、時代が変わったりして、つねに世界から取り残される傾向もある。そのあたりをどうお考えだろうか。
「省庁設置法改正法を通せばいいのです。国会を通さずに内閣が新しい省庁を設置できます。国際協力省だって直ぐにできますし、調整ももちろんしやすい。イギリスは保守党政権から労働党に変わったときにDFIDに替わりました」
全くその通りである。組織を創設したり変更したりするたびに国会審議をしていては、時代遅れが加速する。政治を臨機応変に起動させるには、内閣の機能を強化することだ。
国際協力の人々は国際協力だけに問題を絞った議論をする。しかし、それでは多くの賛同者を得にくい。国際協力だけではなく、他の改革にも通じる太い横軸を通すことが大事なのだ。山内さんの提案は、省益を超えた大きな仕事をするのが立法府の役割なのだということ、そして、その大切さを表している。
山内さんのよどみない口調には、この課題に長く取り組んできた自負と自信があふれている。この課題については、外務省の大いなる抵抗があることを、私は知っている。しかしながら、山内さんには、大きな力で国際協力を生まれ変わらせてほしい。換言すると、「始めに石を投げる人」であっていただきたいのである。
与党には、良い法案なら丸呑みしてほしい
ところで山内さんは、国会対策委員長である。国対委員長といえば、国会運営をめぐって政党間で腹芸を使った駆け引きが常套とのイメージがある。しかし、山内さんはご覧の通りの“好青年”である(失礼!)。
「いいえ、少数の意見を大事にしない民主党政権下では、腹芸なんて発揮する機会もありませんよ。それに、昔みたいに水面下の動きで物事を決めるのは時代に合っていないと思います。大事なのは筋を通すことです。法案ごとに是々非々で対応する。通るかどうかよりも、提案して中身を広く知ってもらいたい。世論の後押しがあれば動きます。民主党に「いいな」と検討してもらえればと思うのです」
山内さんの話では、この法律はどこそこの政党が提出した、というような功績争いにこだわらず、法律を通すことが大事なのであるから、与党にはみんなの党が提出した法案を丸呑みしてもらえればいいのだという。
ふうむ、みんなの党の寛大な心にもかかわらず、与党は、この臨時国会で初めての法案を強行採決させた。ほとんど審議なしであった。この非民主主義ぶりに怒りを覚えた国民も多かったことだろう。私もその一人だ。
「民主党は脱官僚どころか、財務省の権限を強くしただけです。事業仕分けショーは財務省の演出。政府税制調査会も財務省に丸投げですし、一省支配です。あれだけ強引なことをしていて、「国会改革」もないものです。民主党は言っていることとやっていることがまったく違います」
話が国会での強行採決に及ぶや、山内さんは声に力が入ったようである。続けて、民主党が「大きな政府」一直線であること、ヴィジョンもなくなし崩し的に予算を拡大する姿勢、事業仕分けでその分野の専門家を軽視する方法、日米同盟より三党同盟(社民党、国民新党との連立)を重視するあり方などを、矢継ぎ早に批判した。
実は山内さんは、自民党在籍時代、河野太郎議員らとともに、事業仕分けをしている。全く話題にならなかったために、事業仕分けといえば民主党が始めたと思っている人も多いだろうが、山内さんたちの試みを焼きなおしただけであった。



