アラサー女性なら、そろそろ自分らしいスタイルを持ちたい。流行を追い掛けるだけではない、いい意味で自己流のおしゃれ上手になるには、ファッションの知識や智恵もいくらかはあった方がいい。古今東西のファッションを一堂に集めた「ラグジュアリー:ファッションの欲望」展(東京都現代美術館)は、またとないセンス磨きの機会。なぜその服を着るのかを、自分に説明できるようになれば、装いのモチベーションが上がり、堂々と着こなしやすくもなるはずだ。
ファッションが美術展のテーマになるのは、日本ではまだ珍しい。内外から集められた約100点もの貴重なウエアが披露されている本展は、わずか1時間程度見て回るだけで、審美眼をブラッシュアップしてくれるから、見逃すのはもったいない。たくさんの作品を短時間で見比べることによって、感覚が一気に養われる。見終わった後、ファッション感度が確実にレベルアップしたのを体感できるはずだ。
17世紀の王妃ドレスから始まり、「コム・デ・ギャルソン」の代表作総ざらえに至るまで、大半はドレス。だが、「豪華なドレスは縁遠い」と感じる必要はない。ドレスデザインの変遷は今の私たちに、時を経ても錆びない美がどういうものかを視覚的に実感させてくれる。
展覧会の最初のパートに当たる「着飾るということは自分の力を示すこと」では古今のゴージャスでデコラティブなドレスに圧倒される。
しかし、続く「削ぎ落とすことは飾ること」ゾーンでは、「シャネル」や「バレンシアガ」のドレスが見せる、無駄を限界まで省き、シンプルでミニマルな構築美に目を奪われる。ゴテゴテと飾り立てすぎないデザインが、かえって女性の内なる魅力を引き出す「引き算のマジック」は、オンでもオフでも心がけたい美の方程式と言える。大ヒットしているユニクロの「+J」のメッセージも"Luxury will be simplicity."だ。
「シャネル」の傑作「リトル・ブラックドレス」に代表される、歴代のシンプルドレスを見ていると、1960年代の大女優オードリー・ヘプバーンやジャクリーン・ケネディ元米大統領夫人が得意とした、飾り気を抑えた品格ビューティーが思い起こされる。クラシックなワンピースは、シルエットをタイトに見せてくれるだけではなく、着ている人の成熟度や知性までも印象づける。大勢の中で特別な存在に見せてくれるシンプルドレスの装いには、これからのパーティーシーズンに役立つヒントが眠っている。
間近に寄ってじっくり眺めると、丁寧な職人仕事が見事なフォルムを支えていることが分かる。流麗なカッティング、確かなテイラーリングなどを見ると、しっかりした仕立てのスーツやドレスを、年相応に1、2枚は揃えておく意味も感じられる。パッと見は似た感じのワンピースやアンサンブルは比較的リーズナブルな価格設定のショップでも手に入るが、微妙な裁断・縫製の技術差はハンガーに掛かっているときは分かりにくい。でも、ちゃんと1体1体、マネキンに着せてある本展ではその立体感が伝わる。そして、実感できる、「本物は違う」と。



